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​講義内容Q&A

大野記念病院 阪本良太先生


運動器5 筋力評価の方法と筋力増強のメカニズム (質問1件)

・スライド27

超音波画像診断に関して、「質的な評価」で、筋の硬度や滑走性は具体的にどのように評価されているのでしょうか。方法と判断基準等ご教示頂きたいです。


【回答】

 筋の随意収縮における周囲組織との間の滑走性は、収縮力が効率よく張力として発揮されることに影響すると考えられます。また受動要素である筋の硬さも、力の伝達効率として張力に影響すると考えられます。滑走性の評価については、流体画像解析の手法を応用した滑走性の定量化が、硬さについては、超音波エストグラフィ(share wave elastography)による評価方法の開発が進められているようです。その具体的な方法については、「工藤慎太郎ほか:超音波画像診断装置を用いた筋の質的評価.PTジャーナル 56(3): 279-284, 2022」をご参照下さい。


運動器8 骨折外傷後の治癒過程と理学療法 (質問2件)

・スライド26

靭帯・腱の治癒過程について、「適切な時期」というのは、具体的に靭帯・腱それぞれいつ頃にあたるか、また適切な負荷量はどれくらいか、文献やエビデンス等ありましたらご教示頂きたいでです。


【回答】

 スライドについては、安静や不動の問題について説明したものになります。過度な安静や固定における腱や靭帯への弊害は明らかであり、損傷部位の治癒を妨げない、損傷部位の強度に応じた負荷(引張力など)を与えていくことが理想であると考えられます。ただ、その適切なタイミングと負荷について、具体的に示されたものは無いと思われます。適切なタイミングや負荷強度ついては、損傷した組織(腱、関節内もしくは関節外靭帯かなど)やその程度(重症度)、修復処置の状況によって変わってくると思います。実施する運動や動作による損傷組織への力学的ストレスを推察しながら、動作方法の指導や装具などの利用で損傷組織に対して不適切かつ過度なストレス(伸張・圧迫・剪断力など)がかからないように制御しながら、痛みを目安に少しずつ段階的に進めていくことになるかと思います。

 適切なタイミングに関してですが、安静固定については、靭帯であれば、グレード1、2の部分断裂であれば固定は推奨されておらず、グレード3損傷では最低10日間は安静固定が必要とされています。

  Kaminski TW et al.: National Athletic Trainers' Association Position Statement: Conservative

  Management and Prevention of Ankle Sprains in Athletes. J Athl Train. 48(4): 528–545. 2013

  Vuurgerg G et al.: Diagnosis, treatment and prevention of ankle sprains: update of an

  evidence-based clinical guideline. 52(15): 956. doi: 10.1136/bjsports-2017-098106. 2018

 また、適切な負荷に関してですが、腱については粘弾性の特性から、腱にかける負荷強度は運動速度に規定され、等尺性エクササイズ、低速高重量エクササイズ、高速エクササイズ、プライオメトリクスと段階的に進めていくことが推奨されています。

 いずれにおきましても、「熊井 司、片寄 正樹 (監修)、小林 匠、窪田 智史(編集):軟部組織損傷・障害の病態とリハビリテーション−組織特性に基づくアプローチ法の構築. メジカルビュー. 2022」に多くの参考になる情報が網羅されていますのでご参照下さい。


・スライド38

骨折外傷後の処置・治療における基本方針について、「アイシングの効果が懐疑的」とありますが、どのような機序からでしょうか。血管収縮で血流が阻害されるからですか。


【回答】

 その通りだと考えています。アイシングによる軟部組織損傷に対する有効性を示した、質の高いエビデンスは示されていません。アイシングは炎症反応を抑制し、血管収縮により血液供給を減らしてしまうことで、治癒の進行を阻害してしまう可能性が考えられています。ただ、冷却によって神経伝達速度は遅延し、疼痛緩和には有効と考えられます。



りんくう総合医療センター 栗山泰典先生


運動器11 末梢神経障害の理学療法 (質問1件)

・スライド56

知覚脱失期に関して、この時期の立体認知の具体的な理学療法の方法についてご教示頂きたいです。


【回答】

ご質問ありがとうございます。

このスライドで引用させて頂いております文献をみますと、

「この時期は残存知覚と固有受容器を利用した立体認知のセラピィを実施する。視覚フィードバックによる硬さの違うボール、積み木、パテなどを用いる。その際には対側の手指でも同じ作業を行い、具体的な違いをイメージすることが重要である」

とあります。

具体的な介入としましては、硬さの違うボールや積み木などを障害側と健側とで触り比べを行います。健側と障害側でどのように感覚が異なるのか、などを障害側はセラピストが手の介助を行い、固有感覚刺激を入力します。そして、視覚を用いて今触っている感覚と目で見た感覚はどうか、とマッチングを行います。

また、健側で触って感じる感覚(表面がツルツルするなど)を言語で表出してもらい、その後、障害側で触り健側で触った時の感覚を感じるようにする、具体的なイメージをもってもらい、違いを感じる。

などがこの時期に行える介入方法の一例です。決まった方法があるというよりも個別性が高い障害だと思いますので、固有感覚、立体覚、視覚、言語での想起などの評価結果を組み合わせて、症例によってイメージしやすい方法を考えて頂くことが重要だと考えます。参考として捉えて頂けると幸いです。

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