基礎領域
観察による歩行分析の熟練について エキスパートは何を考え、何を見ているのか
盆子原 秀三 氏
了德寺大学 健康科学部 理学療法学科 学科長 教授
【講演概要】
観察による歩行分析は理学療法士にとって特化した臨床スキルである。視覚的な観察によって逸脱した動きを見分け、さらにその原因を即座に絞り込むことを実践している業種は理学療法士のみであろう。Jacquelin Perry博士によるOGA(Observational gait analysis)の代表であるKirsten Götz‐Neumannが日本で初めて両国リハビリテーション専門学校(東京都墨田区)にて講演会を開催したのは2003年であった。あれから20余年となり、現在では安価で簡便な分析ツールが臨床現場で使用されつつあり、動作分析の評価自体をいわゆるAIに頼ることが多くなってきた。しかしながらAIは識別能力には優れているが、問題点を絞り込んでいく認識能力を備えているわけではない。殊にセラピストにとって分析の糸口となる印象というツールはAIにはない。今回、エキスパートによる視覚的な歩行分析の特徴を示し、問題点の絞り込みでの認識能力を向上させるためのトレーニング方法を紹介する。
【受講者へのメッセージ】
リハビリテーションは評価から始まり評価に終わります。そして評価は観察から始まり観察に終わります。特に観察による歩行分析は臨床では頻繁に行われていることであり、セラピストにとって避けて通ることができません。この臨床スキルを養うことは臨床推論を円滑にし、さらにそのことは的確な治療に繋がります 。今回は観察における歩行分析の熟練さに焦点をおき.その観察眼の特徴を表し,どのように推論過程を組み立てていくかについて説明したいと思います。
【略歴】
【学歴】
1986年3月 労働福祉事業団 九州リハビリテーション大学校理学療法学科 卒業
2000年2月 学位授与機構により教養の学位を取得
2010年3月 国際医療福祉大学大学院医療福祉研究科
保健医療学福祉援助工学専攻 博士課程修了
【職歴】
1986年4月 鹿島労災病院リハビリテーション科(理学療法士)
1989年4月 東京逓信病院リハビリテーション科(理学療法士)
1996年1月 札幌総合医療専門学校理学療法学科(専任教員)
2000年4月 順江会江東病院リハビリテーション室(理学療法士)
2003年4月 了德寺学園両国リハビリテーション専門学校理学療法学科(専任教員)
2010年4月 了德寺大学健康科学部理学療法学科 教授
2020年4月 了德寺大学健康科学部理学療法学科 学科長(現在)
2021年9月 明海大学保健医療学部非常勤講師
【学会活動 等】
臨床歩行分析研究会
理学療法士協会
MMIRA(Mixed Methods International Research Association)
日本混合研究会
日本ライフサポーター協会(NPO)
観察による歩行セミナー(基礎編)修了(2004)
Gehen Vwerstehen Ganganalyse nach R.L.A.M.C修了(2004)
能動的学修教員研修リーダー講座修了(2019)
【主な著書】
観察による歩行分析 医学書院 翻訳(2005)
理学療法評価学テキスト 南江堂 監修(2010)
リハビリテーション評価と治療計画 西村書店 翻訳監修(2014)
筋学ハンドブック 医歯薬出版(2014)
関節学ハンドブック 医歯薬出版(2019)
印象から始める歩行分析 医学書院(2018)韓国語版(2020)
印象から始める歩行分析 DVD版 ジャパンライム株式会社(2020)